補綴物の質は、複数の重要な要素によって総合的に評価されます。まず「適合性」は、補綴物が歯質や歯肉(歯茎)とどれだけ緊密に接合しているかを示す指標です。
理想的な適合精度は辺縁ギャップ(補綴物の縁と歯質の隙間)が50マイクロメートル以下とされていますが、当院では院内技工システムにより、30マイクロメートル以下という極めて高い精度を実現しています。
「補綴(ほてつ)」という言葉は、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。補綴とは、失われた歯や歯の一部を、人工物で補う治療のことです。具体的には、被せ物(クラウン)、詰め物(インレー)、ブリッジ、部分入れ歯、総入れ歯、インプラント上部構造など、口腔内に装着するすべての人工修復物が補綴物に該当します。
歯科治療の約80%は、最終的に何らかの補綴処置で完結します。
補綴は歯科治療の「最終ゴール」であり、治療全体の成否を決定する最も重要な段階なのです。根管治療を精密に行い、歯周病を完治させても、最終段階で装着する補綴物の品質が低ければ、それまでの治療努力は無駄になってしまいます。
補綴物と歯質の間に微細な隙間があれば、そこから細菌が侵入し、数年後に補綴物の下で虫歯が再発します。噛み合わせが適切でなければ、特定の歯や顎関節に過度な負担がかかり、歯の破折や顎関節症を引き起こします。
一方、精密で質の高い補綴物を提供できれば、患者様は10年、20年、あるいはそれ以上の長期間にわたって、快適な咀嚼機能と美しい笑顔を維持できます。
補綴物の寿命は、その適合精度、使用材料、製作技術、そして患者様のメンテナンス習慣によって大きく左右されますが、優れた補綴物は半永久的に機能することも珍しくありません。
当院が補綴治療に特にこだわる理由は、まさにここにあります。院内に専用の歯科技工室を完備し、日本補綴歯科学会の専門医が治療を担当することで、一般的な歯科医院では実現困難な、ミクロン単位での精密な補綴治療を提供しています。
さらに、CAD/CAMシステムやマイクロスコープなど最新の機器を活用することで、従来の方法では不可能だった高精度の補綴物製作を実現しています。
補綴物の質は、複数の重要な要素によって総合的に評価されます。まず「適合性」は、補綴物が歯質や歯肉(歯茎)とどれだけ緊密に接合しているかを示す指標です。
理想的な適合精度は辺縁ギャップ(補綴物の縁と歯質の隙間)が50マイクロメートル以下とされていますが、当院では院内技工システムにより、30マイクロメートル以下という極めて高い精度を実現しています。

適合性が不十分な補綴物は、辺縁から細菌が侵入し、セメントが溶解することで二次う蝕(補綴物の下の虫歯のこと)を引き起こします。この二次う蝕は外から見えないため、患者様が痛みを感じて来院された時には、すでに歯髄近くまで進行していることが多く、結果として再治療が必要になります。
統計によれば、補綴物の再製作の約60%は二次う蝕が原因です。つまり、初回の補綴治療で高い適合精度を達成することが、長期的な歯の保存において決定的に重要なのです。
「審美性」は、単に色が合っているというだけではありません。天然歯は透明感、色の濃淡、表面の質感など、複雑な光学的特性を持っています。
優れた補綴物は、これらの特性を再現し、隣接する天然歯と見分けがつかないレベルに仕上げる必要があります。特に前歯部では、患者様の年齢、性別、肌の色、さらには職業や社会的背景まで考慮した審美設計が求められます。
当院では、院内技工士が直接患者様と対話し、自然光の下で色調を確認することで、写真では判別できない微妙な色の違いまで再現します。

「機能性」には、咀嚼効率と噛み合わせの調和が含まれます。咬合力は臼歯部で約60kg、前歯部で約20kgに達します。補綴物はこの強大な力に耐えながら、力を均等に分散させる必要があります。
当院では、咬合器を用いて顎運動を詳細に分析し、前方運動、側方運動、開閉口運動のすべての局面で調和のとれた咬合面形態を設計します。これにより、特定の歯に過度な負担がかかることを防ぎ、歯の破折や顎関節症のリスクを最小化します。

さらに、補綴物の形態は発音や頬・舌の動きにも影響します。特に前歯部の補綴物は、「サ行」や「タ行」の発音に直接関与します。
不適切な形態の補綴物は、患者様の話し方に違和感をもたらし、日常生活の質を低下させます。当院では、仮歯の段階で患者様に実際に話していただき、発音に問題がないことを確認してから最終補綴物を製作します。
「耐久性」は、使用材料と製作技術の両方に依存します。
例えば、ジルコニアセラミックは強度と審美性を兼ね備えた材料ですが、その性能を最大限に引き出すには、適切な厚みの確保、正確な焼成温度の管理、精密な研磨技術が必要です。
当院の院内技工所では、各材料の特性を熟知した技工士が、製作工程のすべてを管理することで、材料本来の性能を100%発揮させた補綴物を製作しています。

当院には、日本補綴歯科学会が認定する補綴専門医が複数在籍しています。
補綴専門医の資格取得には、歯科医師免許取得後、5年以上の臨床経験と、専門的な研修プログラムの修了、複数の学術論文の発表、そして厳格な試験への合格が必要です。
この資格を持つ歯科医師は、全国で約1,200名(歯科医師全体の約 1%)しかいません。

補綴専門医は、単に補綴物を作るだけでなく、口腔全体を一つのシステムとして捉え、総合的な治療計画を立案します。
例えば、多数歯欠損の患者様では、残存歯の状態、顎堤の形態、咬合高径の評価、顎関節の状態、咀嚼筋の機能など、多角的な診査が必要です。これらの情報を統合し、10年後、20年後の口腔内の変化まで予測した上で、最適な補綴設計を決定するのが補綴専門医の役割です。
当院では、デジタル技術も積極的に活用しています。口腔内スキャナーで得られた3Dデータと、咬合器上での顎運動のデータを統合することで、コンピューター上で精密なシミュレーションを行います。
これにより、実際に補綴物を装着する前に、審美性や機能性の問題点を発見し、修正することが可能です。特に複雑な症例では、このデジタルプランニングが治療の成否を分けます。

補綴専門医は他の専門分野との連携においても中心的な役割を果たします。例えば、矯正治療とインプラント治療を組み合わせた包括的治療では、矯正専門医、インプラント専門医、そして補綴専門医が緊密に連携し、各治療段階での最適な判断を下す必要があります。
当院では、補綴専門医がこれらの専門医間のコーディネーターとして機能し、患者様にとって最良の治療結果を追求します。
当院の補綴治療の品質を支える最大の要因が、院内に設置された歯科技工室です。なぜ院内技工所が重要なのか、一般的な外部技工所委託システムと比較しながらご説明します。
現在、日本の歯科医院の約95%は、補綴物の製作を外部の歯科技工所に委託しています。しかし、この従来のシステムには、以下のような本質的な限界があります。
外部技工所では、技工士が患者様と直接会うことができません。歯科医師が撮影した口腔内写真や、文字で記載した指示書だけを頼りに補綴物を製作します。
しかし、写真では伝えきれない微妙な色調や質感、患者様の表情や雰囲気、話し方や笑い方などの情報は、理想的な補綴物を作る上で極めて重要です。
当院の院内技工士は、治療開始の段階から患者様と直接コミュニケーションを取ります。初診時に技工士も立ち会い、患者様の希望や期待を詳しくヒアリングします。「自然な色がいい」という希望一つとっても、患者様によって求めるイメージは大きく異なります。
院内技工士は、患者様との対話を通じて、その方が本当に望んでいる審美性を正確に理解し、それを補綴物の形態と色調に反映させます。
製作途中での調整が可能なことも、院内技工所の大きな利点です。仮歯の段階で患者様に実際に使用していただき、問題があればその日のうちに修正します。
色調が気に入らなければ、その場で技工士が調整します。形態に違和感があれば、即座に改善します。外部技工所に委託している場合、このような迅速な対応は不可能です。
緊急時の対応力も全く異なります。補綴物が破損したり、不適合が生じたりした場合、外部技工所では数日から1週間の修理期間が必要です。
しかし院内技工所があれば、ほとんどのケースで当日中、遅くとも翌日には修理や調整が完了します。
この迅速性は、患者様の生活の質を維持する上で決定的に重要です。特に前歯部の補綴物が破損した場合、見た目の問題から社会生活に支障をきたすことがあります。当院では、そのような緊急事態にも即座に対応できる体制を整えています。
技術面でも、院内技工所は優れています。外部技工所では、コスト削減のために製作工程の一部を海外に委託したり、新人技工士が担当したりすることがあります。いわゆる担当者ガチャです。
しかし、当院の技工士は、20年以上の経験を持つベテランであり、すべての工程を一貫して担当します。この一貫性が、補綴物の品質を保証します。
虫歯治療は、感染した歯質を除去して終わりではありません。
削った部分を補綴物で修復して初めて、治療は完結します。
ここで最も重要なのは、補綴物の辺縁封鎖性です。補綴物と歯質の接合部に微細な隙間があると、そこから唾液や細菌が侵入し、二次う蝕を引き起こします。
当院では、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用して、最大20倍の拡大視野下で歯質を形成します。肉眼では見えない微細な亀裂や、取り残された感染歯質も確実に除去できます。
さらに、精密な印象採得(型取り)により、ミクロン単位で正確な模型を製作します。この精密な模型から、院内技工士が辺縁ギャップを最小限に抑えた補綴物を製作します。

補綴物の材料選択も重要です。小さな虫歯であれば、コンポジットレジンによる直接充填が適していますが、中程度以上の虫歯では、セラミックやゴールドなどの間接修復が推奨されます。
それぞれの材料には長所と短所があり、歯の位置、噛み合わせの強さ、審美的要求などを総合的に判断して選択する必要があります。当院の補綴専門医は、患者様の口腔内の状況と希望を詳細に分析し、最適な材料と修復方法を提案します。
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痛くない・できるだけ削らない治療
歯周病の治療では、歯周組織の炎症をコントロールすることが第一目標です。
しかし、中等度以上の歯周病患者様の多くは、咬合にも問題を抱えています。
歯周病の進行により歯が動揺すると、噛み合わせが変化し、特定の歯に過度な咬合力が集中します。この力が、歯周病をさらに悪化させる悪循環を生みます。

このような症例では、歯周病の基本治療と並行して、咬合の調整や補綴物による咬合再構成が必要です。当院では、歯周病専門医と補綴専門医が連携し、歯周組織の状態を改善させながら、同時に咬合力を均等に分散させる補綴治療を行います。
具体的には、暫間補綴物(仮歯)を用いて、理想的な咬合関係を探求します。数ヶ月かけて咬合を調整し、歯周組織が安定することを確認した上で、最終補綴物を製作します。この慎重なアプローチにより、歯周病の再発を防ぎ、長期的な歯の保存を実現します。
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全身疾患にも深く関わる治療
矯正治療で歯列を整えた後、古い補綴物が目立つことがよくあります。
矯正前は気にならなかった変色や形態の不調和が、歯列が整うことで逆に顕著になります。
また、矯正治療により歯の位置が変化すると、咬合関係も変わるため、既存の補綴物が適合しなくなることがあります。

当院では、矯正治療の計画段階から、補綴専門医が関与します。矯正治療後の最終的な歯列を予測し、どの歯にどのような補綴が必要になるかを事前に計画します。これにより、矯正治療と補綴治療がシームレスに連携し、治療期間の短縮と、より高い審美的・機能的結果を実現します。
特に成人矯正では、歯の形態や色調に関する患者様の要望が高いため、矯正治療後の補綴治療が治療満足度を大きく左右します。当院では、矯正専門医と補綴専門医の緊密な協力により、単に歯列を整えるだけでなく、理想的な笑顔を創造することを目指しています。
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正しい噛み合わせを実現
インプラント治療では、チタン製のインプラント体を顎骨に埋入する外科手術に注目が集まりがちです。
しかし、インプラント治療の最終的な成否を決めるのは、インプラント上に装着する上部構造(補綴物)です。どれほど完璧にインプラントが骨に結合しても、上部構造の設計や製作が不適切であれば、審美的にも機能的にも満足のいく結果は得られません。

当院のインプラント治療は、「補綴主導型アプローチ」を採用しています。まず補綴専門医が、理想的な最終補綴物の形態と位置を設計します。
次に、その補綴物を支えるために必要なインプラントの位置、角度、深さを決定します。この順序を逆にすること(先にインプラントを埋入してから、その位置に合わせて補綴物を作ること)は、妥協的な結果につながります。
また、インプラント周囲の軟組織(歯肉)のマネジメントも、補綴の品質を左右します。天然歯と同様に、インプラント周囲にも適切な厚みと形態の角化歯肉(歯槽骨にしっかりと付着している、硬くて厚みのある歯茎)が必要です。
当院では、インプラント手術の段階から軟組織の形成を考慮し、最終補綴物が自然な審美性を持つよう計画します。
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天然歯に近い噛み心地を実現
入れ歯(有床義歯)は、歯科補綴学の中で最も歴史が長く、同時に最も難易度の高い治療分野の一つです。
インプラントや固定式のブリッジと異なり、入れ歯は取り外し式であり、口腔内で動きます。この動きを制御し、安定した義歯を製作するには、極めて高度な知識と技術が必要です。

入れ歯の品質を決める要因は多岐にわたります。
当院の入れ歯治療では、補綴専門医が咬合器上で精密に設計し、院内技工士が患者様の希望を直接聞きながら製作することで、装着感が良く、よく噛めて、自然な見た目の入れ歯を提供しています。特に総入れ歯では、製作後も定期的な調整が必要ですが、院内技工所があることで、迅速かつ的確な調整が可能です。
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ぴったりフィット違和感のない快適さ