左下のインプラントが腫れて痛い
左下の奥歯にあるインプラント部分の歯茎が腫れて膿が出ており、痛みも伴うとのことでご来院されました。
以前に他院で埋入されたインプラントが入っている部位で、噛むときの違和感と腫れた歯茎への不安を強く感じておられました。

左下の奥歯にあるインプラント部分の歯茎が腫れて膿が出ており、痛みも伴うとのことでご来院されました。
以前に他院で埋入されたインプラントが入っている部位で、噛むときの違和感と腫れた歯茎への不安を強く感じておられました。
これらの所見から、インプラント周囲炎(インプラントの周りの骨が細菌感染によって溶けてしまう病気)と診断しました。
インプラント周囲炎を放置した場合、骨の吸収がさらに進行し、最終的にはインプラントが脱落するリスクがあります。一度失われた骨は自然には回復しないため、骨の吸収を止めるためには、早めの治療が大事です。
一方で、今回の患者様は普段のセルフケア(プラークコントロール)が良好に保たれており、お口の中全体の衛生状態は安定していました。この状態であれば、外科的にインプラントを撤去せずとも、低侵襲な治療で病状をコントロールできる可能性が高いと判断しました。
そこで治療法として、ブルーラジカル(過酸化水素水と特殊なレーザーを組み合わせて、インプラント表面に付着した細菌や毒素を除去する治療法)をご提案しました。歯茎を大きく切開せずに殺菌処置が行えるため、患者様の負担を抑えながら炎症の改善を目指せる治療法です。
治療部位である左下7番のインプラント周囲に浸潤麻酔(部分麻酔)を行いました。麻酔をして治療時の痛みを軽減できるようにしています。
歯と歯茎の隙間を歯周ポケットと言いますが、このポケットに薬液を注入し、専用のレーザーを照射しました。
この処置により、インプラント表面にこびりついたバイオフィルムと呼ばれる、細菌の塊を除去しました。
処置中は機器の振動が伴うため、ゆっくり徐々に進めていきます。
殺菌処置の後、インプラント周囲の溝を生理食塩水で十分に洗浄し、処置を終えました。治療自体は1日で完了します。
術後1ヶ月の時点で来院いただき、歯茎の状態を確認しました。患者様によると、術後の痛みは4日間続いたものの強い不安には繋がらず、現在は痛みも消失して非常にすっきりしているとのお話でした。
問題部位を黄色い円で示した治療前後の比較です。
治療前は歯茎が赤く腫れ、インプラントの金属部分が大きく露出していましたが、治療後は歯茎の赤みが落ち着き、健康的なピンク色に近づいています。歯茎と隣の歯との境目もすっきりとした印象に変化し、炎症によるブヨブヨとした腫れぼったさが解消されています。
本症例で最も重視したのは、外科的にインプラントを撤去するという選択を回避し、可能な限りインプラントを温存する方針を貫いた点です。
患者様のプラークコントロールが良好であったことが、この判断の大きな根拠となりました。日々のケアがしっかりできている患者様であれば、低侵襲な処置でも病状を安定させられる可能性が高いからです。逆にセルフケアが不十分な状態でブルーラジカルを行っても、再感染を繰り返してしまう恐れがあります。
患者様の口腔内環境と症状の進行度を総合的に評価したうえで、外科処置ではなくブルーラジカルを選択した判断が、結果として身体への負担を抑えた治療に繋がりました。
インプラント周囲炎は、一度治療が成功しても再発のリスクが残る病気です。長期的にインプラントを良好な状態で維持するためには、ご自宅でのセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスの両方が欠かせません。
ご自宅では、歯ブラシだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスを活用し、インプラント周囲のプラーク(歯垢)を毎日丁寧に除去していただく必要があります。
歯科医院では、専門的な器具を使ったクリーニングと、インプラント周囲のポケット測定、レントゲンによる骨の状態の評価を定期的に行います。
本症例では術後12週以降のメンテナンス時に再評価を予定しており、治療効果が安定して持続しているかを慎重に確認していきます。
ブルーラジカルは、術者がインプラント表面を直接目で見て確認できる治療ではありません。だからこそ、術前の診査と術後の経過観察を丁寧に積み重ねることが、結果を左右すると考えています。
術後経過は良好で、現在は痛みも無くなりすっきりしているとお話しいただき、治療に携わった者として大変嬉しく思っています。
インプラント周囲炎は早期発見と適切な対応が重要であり、また治療後も継続的な管理が欠かせません。
患者様のご要望である「腫れと痛みを改善したい」というご希望にお応えするため、患者様のお口の状態に最も適した治療法の選択と丁寧な処置、そして術後の経過観察まで、担当医として責任を持って取り組ませていただきました。
引き続き患者様のお口の状態を見守り、良好な状態を維持できるように努めてまいります。
| 治療時期 | 2026年2月 |
|---|---|
| 主訴 | インプラントが腫れて痛い |
| 治療期間 | 処置1日、治癒期間約2週間(術後12週以降に再評価予定) |
| 治療費 | 22,000円 |
| リスク | 施術中の振動による不快感、術後数日間の痛み、インプラント周囲炎の再発の可能性、 症状によっては追加の外科処置が必要となる場合があること |